2025年09月20日

なぜ「モール泉」は温泉法の鉱泉分析法指針で定義されていないのか?

■モール泉とは何か
モール泉は、植物由来の有機物を多く含む温泉で、黒褐色や琥珀色のお湯が特徴です。泥炭層や古代植物の堆積物を通って湧き出すため、肌にやさしい成分が多く「美肌の湯」として知られています。北海道や東北の一部で多く見られ、独特のぬめり感と香りがあります。

■成分的特徴
モール泉の色や香りは「フミン酸」や「フルボ酸」といった有機酸によるものです。これらは無機成分と異なり、地質や植物遺骸の状態によって含有量が変動します。

■温泉法の鉱泉分析法指針とは
温泉法は温泉の定義や基準を定める法律で、その分析方法や分類は「鉱泉分析法指針」に基づいて行われます。泉質名(硫黄泉、炭酸泉、塩化物泉など)は、この指針で定められた成分や含有量によって判定されます。

■無機成分中心の分析基準
鉱泉分析法指針は、主に無機成分(ナトリウム、カルシウム、硫酸イオンなど)の量やpH、温度などを基準に分類します。有機物は一般的に泉質名の判定要素から外れています。

■モール泉が定義されない理由
モール泉は特定の無機成分によって特徴づけられる温泉ではなく、有機物の含有が特徴です。この有機物は温泉法の泉質分類の枠組みに入らないため、正式な泉質名としては認められていません。

■モール泉の指標たるものとは?
モール温泉は俗称であるため、泉質として定義することはできませんが、仮に指標となるものをあてはめると腐植質が考えられます。腐植質はフミン酸と総称される有機物で、その起源は植物、微生物、プランクトン等の生物遺骸です。その起源や存在環境は多種多様であるため、一つとして同じ腐植質は存在しません。つまり、腐植質を含有する温泉が異なる地域で湧出していれば、その地域の数だけモール温泉の種類があると言えます。

■モール泉を楽しむための視点
法律上の定義がなくても、モール泉はその色・香り・肌触りからファンの多い温泉です。泉質表示だけでなく、施設の説明や口コミを参考にすると、より満足度の高い入浴体験が得られます。

■表示の裏側を理解する
温泉分析書を見て「有機物(遊離フミン酸など)」の記載があれば、それがモール泉の証拠です。法律にない分類だからこそ、知っている人だけが選べる「通な温泉」ともいえます。
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